日時 | 平成19年8月5日(日) |
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会場 | 矢来能楽堂 |
出演 | シテ: 桑田 貴志 ワキ: 野口敦弘ほか |
摂津国阿部野の市で酒を売っている男(ワキ)は、毎日来ては酒を飲んで帰る男達(前シテ・ツレ)を不審に思いある日、声 を掛けてみる。男達は詩歌などを詠じて楽しんでいたが、そのうちに「松虫の音に友をしのぶ」との言葉を発する。酒売りの 男がその謂れを尋ねると、男は次のように語る。昔、阿部野の原を2人の若者が歩いていたが、そのうちの一人が松虫の音に心 惹かれ草むらに入って行ったまま帰ってこなかった。心配したもう一人があとを追うと何故か、先の男は草露の上で死んでい たというのである。実は自分は、その取り残された男の亡霊であり、今なお松虫の音に友を偲んでいると言い残し、帰ってゆ く。その夜、かの男の跡を弔う酒売りの男の前に、男の亡霊(後シテ)が現れ、弔いを感謝し、友を偲んで舞を舞う。やがて 明け方となり、男は尾花の陰に消えて行き、後には松虫の音が残るだけであった。