日時 | 平成21年9月20日 |
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会場 | 喜多能楽堂 |
シルバーウィークの真っただ中、緑泉会にて「敦盛」を勤めました。
「敦盛」は修羅物の中でも最も華やかな能です。何といっても、普通は女性が舞う「中の舞」という舞を舞います。ただ、華やかな中にも武将としての力強さを兼ね備えなければなりません。
前シテは平敦盛の化身である若い男です。これは難しい役どころです。十六歳で討たれたとされる平敦盛を、能面を着けない直面で演じなければなりません。しかも平敦盛は、平家を代表する美男子の武将です。私は今年三十八歳と、敦盛の倍以上生きております。まあ、年齢のことはおいといて、前シテはとにかく華やかに若々しく演じるように勤めました。
ツレが三人登場しました。五十一歳の中所宜夫師に、十八歳の池上彰吾君、十六歳の中所真吾君。ツレの二人は、敦盛の実年齢に近い若者です。二人とも、子方の経験はありますが大人としては初舞台です。技術はまだまだ未熟ですが、舞台を若々しく華やいだものにしてくれました。
後シテは、平敦盛が昔を思い返しながら舞を舞うという風情ですので、煌びやかに演じました。キリでは太刀を抜いて戦いの場面を再現しますが、下品にならないように、品よく太刀を振るよう心がけました。何せ、非力ゆえに討たれてしまう貴公子の役どころですから。
この能は、舞も謡いもたっぷり分量があり、やりがいがありました。能面は「十六」という、「敦盛」の専用面を使わせて頂きました。この能面は、少年のような顔立ちをしています。十六にして死に直面せざるをえなかった平家の公達のはかなさを、上手く現わしています。
心地よく舞うことが出来ました。