日時 | 平成21年11月8日 |
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会場 | 矢来能楽堂 |
秋の農繁期ならぬ能繁期の中、九皐会にて「葛城」を勤めました。私にとって、鬘物初挑戦です。
だいたい能楽師の修業過程として、まず若いうちは、神様がシテである神能を稽古します。神能は、変に心持ちを入れたりせず、まっすぐに強く演じます。能の骨格とも言えます。
その後、鬼がシテの切能や武士がシテの修羅能を演じます。動きの多いこれらの能は、若い肉体で活き活きと舞う必要があります。
そして、演劇的な狂女物を演じて、最後に鬘物に取り組みます。
鬘物は、世阿弥は能の本質と言っています。少ない動きの中で、内面を上手く表現しなくてはなりません。一曲を通して美しくたおやかに演じます。まさに、能役者の品格が現れます。
「道成寺」を終え、そろそろ鬘物にも取り組もうと考えて、「葛城」に挑戦しました。
「葛城」のシテは複雑な性格です。
自分の容姿の醜さを恥じているというとても人間的な女神です。ただ、醜い女を汚く演じては能になりません。
前場は、少し影のある女性として少々暗く演じてみました。
後場は少しキツイ装束を着ることで異質さを出しましたが、とにかく美しく舞うように心がけました。
初めて舞った鬘物の感想は、一言で言うと「楽しかった」です。
鬘物、とりわけ序之舞は時間がゆっくりと流れるので、自分を客観的に見やすいです。
何だか、舞っている自分のことがよく見えた気がします。
世阿弥のいうところの、「離見の見」の心待ちを感じました。
これから徐々に、鬘物にも挑戦していきたいと思います