能楽師・桑田貴志 深川能舞台WEBサイト

公演レポート

緑泉会「花月」


日時 22年9月23日
会場 喜多能楽堂

横殴りの凄い雨の中、「花月」を楽しく舞いました。

この曲は、とにかく美少年が天真爛漫に謡って舞うという芸尽くしの能です。 派手な色合いの装束を着て、喝食という特別な髪型で、弓矢といった派手な持ち物を持った芸能者が、当時の流行り歌などを織り交ぜながら面白く芸を見せる。そんなアイドル歌謡ショーのような能です。 この曲は、本当の少年か自然体で演じられる年功の役者が良く似合うと言われます。 当初は、大人の「花月」を目指しました。随所に大人の味わいを出そうと工夫しました。 アイドルだっていつまでも歌謡ショーをやる訳にはいきません。どこかでじっくり歌やダンスを見せる実力がなければ生き残れません。

しかし、それは裏目に出ました。申合ではどうにも中途半端な「花月」となってしまいました。 私にはまだ、年功の役者の味わいは無理だと悟り、申合のあと、少年の自然体の「花月」へと軌道修正しました。 当日は、若い気持ちに戻ってハツラツと演じました。謡いは高く張って謡い、舞は手足を伸びやかに勢いよく。 本当の少年ではないので、少年独特の華はありません。でも、役者は演じなければなりません。疑いもなく少年になりきって演じました。 考えてみれば、未だにアイドルとして活躍しているSMAPは私と同年代です。 私だってアイドルになれる。そう信じ切りました。

大人の歌謡ショー。それが今回の花月です。

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