この学校は、アジア人によるアジアから発信する新しい演劇を創り上げることを目指して立ち上げられた演劇学校で、アジア各国からやってきたプロの役者たちが、身体表現の一環としてアジアの古典演劇を学んでいます。
学生たちは中国の京劇、インドのバラタナシオン、インドネシアの宮廷舞劇とならんで能を勉強しています。指導は主に観世喜正先生が行なっておりますが、なにぶん多忙な方なので、2002年に続いて今年も、その助手として1~3月の計4週間行って参りました。
今回の学生は、日本・中国・台湾・香港・マカオ・マレーシア・フィリピン・シンガポール・インド・ポーランドの10の国と地域から集まってきた16名です。
授業は全て英語で行なわれており、私も片言のたどたどしい英語で能の稽古をしました。怪しい英語でしたが、学生の大半も英語圏の人ではないので、お互い身振り手振りでなんとか意志の疎通をはかるという具合。
謡の稽古では、謡本にローマ字でカナを振って一行ずつオウム返しで謡い、仕舞はとにかく一緒に動いて反復練習。ただ、さすがに現役の役者だけあってとりえは抜群によく、最後の発表会では簡単な装束と面をつけて、オムニバス能が演じられました。
アジア各国の役者の、演技に対する真摯な姿勢に触れ、同じ表現者として私にとってもよい経験をさせていただきました。