日時 | 平成17年7月24日(日) |
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会場 | 矢来能楽堂 |
出演 | シテ:桑田貴志 ワキ:安田 登 ほか |
頃は早春。須磨の浦、生田川のほとりに着いた旅の僧(ワキ)は、一木の梅を目にする。やがて、その場に現れた一人の里人(前シテ)。梅花の名を尋ねる僧に、男は「箙の梅」と答える。さらにその謂れを僧が問うと、男はかつて源平合戦の際に、源氏の若武者・梶原源太景季(かげすえ)が折からの梅を手折って箙に挿して笠印としたことから、その名が付き詳しく一の谷の合戦の様を語る。
不審を抱いた僧が男の素性を尋ねると景季の亡霊であることを言い残し、梅の木陰に姿を消す。(中入)所の者(間狂言)より箙の梅について聞いた僧は、今宵の宿を梅花の下に定め、一夜の仮寝に身を預ける。すると、その夢の中にかつての若武者姿となった景季の霊(後シテ)が現れ、修羅道の苦患を見せると自身の箙を鮮やかな梅花を挿し、縦横無尽な る働きを見せた合戦の様子を再現して見せ重ねて回向を頼み消えて行く。
「田村」・「屋島」と並び「勝修羅三番」と称される本曲は、他の二曲に比べ修羅の苦患を如実に表していることから一抹の哀愁を漂わせているのが特徴。前半は一の谷合戦を述べる「語り」、後半は郎等三騎との合わせ技で敵陣に切り込むなど、勇壮な戦物語を展開する「仕方噺」と見どころ、聞き所の多い曲である。