能楽師・桑田貴志 深川能舞台WEBサイト

公演レポート

緑泉会 定例会「葵上」


日時 平成19年4月14日(土)
会場 喜多六平太記念能楽堂
出演 能「葵上」
シテ:桑田貴志
ツレ:坂 真太郎
ワキ:殿田謙吉 ほか
葵上あらすじ

左大臣の娘で、光源氏の正妻である葵上が物怪に悩まされている。様々な祈祷や治療を施したが一向に回復の気配がない。そこで官人(ワキツレ)は、その原因を探るため、梓の弓をひいて怨霊を呼び寄せることの出来る、照日の巫女(ツレ)という名高い巫女を呼んで、怨霊の正体を占わせる。すると梓の弓の音に引かれて、かつて光源氏に一身に愛を注がれた六条御息所の生霊(前シテ)が現れる。御息所は、もはや光源氏と決して結ばれることのない我が身を歎き、激しい嫉妬のあまり葵上の枕元へ打ち寄せ、姿を消す。(物着) 驚いた官人は、法力でもって悪霊を追い払おうと横川の小聖(ワキ)を招く。横川の小聖が加持祈祷を行うと、六条御息所の生霊(後シテ)が鬼女の姿で再び現れ、小聖に襲いかかってくる。両者は激しく責め合うが、ついに御息所は祈り伏せられ悪鬼のごとき心も和らぎ、成仏していくのであった。題名になっている「葵上」自身は舞台には登場しない。舞台の正面先に置いてある小袖が葵上の寝姿の象徴である。秀逸な演出である。これにより六条御息所が葵上を責め立てるシーンに生々しさは感じられず、御息所の内面の悲しさが際立つ。

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